②自動車保険について知る

1 自動車保険の種類

(1)強制保険

 自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)

(2)任意保険

ア 相手のための保険:対人賠償保険、対物賠償保険

イ 自分ための保険:自損事故保険、無保険車傷害保険、車両保険、搭乗者傷害保険、弁護士費用特約 

2 自賠責保険とは何か

 自動車損害賠償保障法によって、車の持ち主全てが加入する義務のある保険です。

加入しないと罰則があります。

 自賠責保険の特徴は、以下のようになります。

(自賠責保険の特徴)

対人賠償のみ。対物賠償には適用されない。

⇒ 相手の損害を賠償するための保険であり、自分の損害には適用されない。

被害者の最低限の救済を目的とする。

⇒ 支払額の基準が低い。

③被害者の過失相殺が制限される。:被害者救済のため

⇒ 被害者の過失が7割未満なら全額が支払われる。

被害者の過失割合が7割以上10割未満の場合も、傷害に関する治療費・慰謝料は8割が支払われる(過失割合>>減額割合)。後遺障害・死亡に関するものは5割~8割が支払われる。

④支払額の算定方法が定型的であり、支払いが迅速

3 任意保険とは何か

 自賠責保険で足りない部分を補填するための保険です。加入するかどうかは任意(個人の自由)ですが、自動車所有者の7~8割がなんらかの任意保険に加入しています。

 任意保険の一般的な特徴は以下のようになります。

(任意保険の特徴)

①保険の種類によって、対人賠償以外にも、対物賠償にも適用されるし、自分の損害についても適用される場合がある。

自賠責保険で足りない部分の填補を目的とする

⇒ 自賠責保険よりは支払額の基準が高い。

厳しく過失相殺される。

⇒ 被害者の過失相殺が大きい場合は、自賠責保険の基準の方が有利なこともある。

保険会社の判断で支払いがされなかったり、時間がかかったりする場合がある。

4 任意保険の各保険内容

(1)相手のための保険

対人賠償保険、対物賠償保険

 ⇒自分が事故を起こした加害者である場合に、これらの保険に加入していれば、被害者に対して支払わなくてはならない人損、物損の賠償を保険会社が支払ってくれます。

 任意保険が負担するのは、被保険者(加害者)が負う賠償責任額から自賠責保険で負担される額を除いた残りの額についてです。

(2)自分のための保険

 

自損事故保険

⇒自動車の運行に起因する急激、偶然の外来事故が対象です。

例)電信柱に激突して障害を負った。崖から転落して死亡した。

無保険車傷害保険

⇒被保険者が交通事故被害者の場合で、加害者が無保険で十分な損害賠償が得られない場合に支払われる保険です。任意保険に加入していない加害者は多くの場合、損害賠償を支払う資力に乏しく、被害者が泣き寝入りするしかない状況がありました。そのため、被害者救済の需要から、被害者の自己防衛のためにつくられた保険といえます。

 実損填補の保険で、填補額は損害賠償額と同額です。保険会社の約款上、人身傷害保険(下記参照)から支払いが受けられる場合等にはこの保険金は受けられないとされています。

人身傷害保険

⇒自動車運転に起因する事故などにより身体に傷害を被った場合に支払われる保険です。被保険者(被害者)の過失を問うことなく、仮に過失があっても契約に定めた基準内で実際の損害分が支払われます。従来の自動車保険は、事故の被害者にお金を支払うものであり、被保険者が加害者となることを想定したものでした。人身傷害保険では被保険者自身が事故で損害を負った場合に保険が適用されるという、いわば純粋に自分のための保険といえます。そして、被保険者の過失を一切問わないという点が画期的でした。できるだけ、保険金を払いたがらないイメージのある保険会社にしては、意外なものであると思います。このような保険が登場した背景には、保険会社にとって、保険金を出し渋るのにもお金がかかるという事情があります。被保険者の過失を問題にして「保険の適用除外である・適用があっても減額される」と主張するためには、調査費用、治療費等の証明費用、裁判費用等がかかり、これが相当高額になることが明らかになったのです。そのため、保険会社はいっそもう過失を問題とすることなく、保険金を支払った方がコストが抑えられると考えました。過失を問題とせず保険金を支払うため、保険料金は高めに設定されています。

車両保険

⇒衝突、接触、物の飛来等によって自動車に損害が生じた場合に支払われる保険です。

搭乗者傷害保険

⇒被保険者の自動車運行等に起因して身体を傷害を被った場合に支払われる保険です。人身傷害保険と違って、実際の損害額ではなく、傷害の種類に応じた定額での支払いとなります。

 例)

保険金の種類

支払事由

保険金額

死亡保険金

死亡

保険金額全額

座席ベルト装着者特別

座席ベルトを装着しての死亡

保険金の30%、300万が限度

後遺障害

後遺障害

等級別に4~100万円

重度後遺障害

等級1,2,3級で介護が必要

保険金の10%、100万円を限度

介護費用

等級1,2,3級で介護が必要

保険金の78~100%(障害等級による)のさらに50%、500万が限度

医療保険金

医師の治療を必要とした場合

①1~5日未満の治療日数

傷害に関係なく1万円

②治療日数の合計が5日以上は別表に定める部位・症状別保険金

弁護士費用特約 

⇒人身事故、物損事故の加害者に対する損害賠償請求を弁護士に委任して生じた弁護士報酬、訴訟費用、仲裁・和解・調停に要した費用、法律相談料等を合計300万円まで填補する特約です。

 特約が適用される人的範囲は被保険者、被保険者の配偶者(内縁含む)、被保険者または配偶者の同居の親族、保険者または配偶者の別居の未婚の子、上記以外で被保険者の正規の乗車装置又は当該装置のある室内に搭乗中の者とされています。

 支払いがなされるのは、次のいずれかに該当する場合に、被保険者が賠償義務者に対する損害賠償請求を弁護士に委任することで生じた費用に対してです。①自動車事故により被保険者の生命身体が害された場合、②自動車事故により被保険者が所有、使用又は管理する財物が滅失、破損又は汚損された場合が対象となります。

ファミリーバイク特約

⇒被保険者が所有、使用、管理する原付自転車を被保険自動車とみなして保険契約の条件に従って保険金を支払うというものです。保険の補償が受けられる範囲は被保険者自身、被保険者の配偶者(内縁含む)、被保険者又は配偶者の同居の親族、被保険者または配偶者の別居の未婚の子となっています。

 

5 自賠責保険と任意保険の関係

 被害者への賠償金は、まずは自賠責保険から支払われ、不足する場合は任意保険から支払われるのが原則のはずです。しかし、これでは2回の手続きを要するので、手間のかかることになります。そのため、一般的には任意保険の保険会社が窓口になり、自賠責保険についても一括して対応しています(任意保険一括対応)。つまり、任意保険の会社が自賠責保険の対象部分についても支払いをし、事後的に自賠責保険に求償するという取り扱いを行っています。

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