物的損害について

車両修理費等

⑴ 全損の場合

 車両が修理不能の場合(物理的全損)又は修理費が事故時の時価額に買替諸費用を加えた金額を上回る場合(経済的全損)は,事故時の時価額に買替諸費用を加えた価格が賠償額となります。
 
理由:事故車両の事故当時の車両価格及び買替諸費用が賠償されれば, 被害者は同一の車両を手に入れることができ,その結果,被害を受ける前の経済状態が回復されるため。
 
時価額の調べ方:レッドブック,中古車情報サイト,中古車情報誌
 

⑵ 一部損傷の場合

 必要(事故起因性)かつ相当(必要な修理の程度)な範囲の修理費を損害とします。なお,裁判では,修理費の見積書・請求書の全修理箇所を精査して事故との因果関係がない部分や過剰な修理部分を摘示しますが,なかなか認められないのが実情です。
 

⑶ 引き揚げ費用・レッカー代、時価査定料・見積費

 特に高額すぎるなどの事情がない限り,事故と因果関係があるものとして損害と認められます。
 

⑷ 保管料 

 事故車両を修理するか買換えをするかを判断するために必要な期間(通常2週間程度)において支出した保管料は損害と認められます。
なお,物的証拠の保全のための保管料については,通常は写真をもって破損状態を保存すれば足りるため,損害として認められないことが多いです。
 

⑸ 廃車費用

 物理的全損または経済的全損となり,買換えをする場合には損害と認められます。
 

⑹ 買替諸費用

 新たに取得した車両の自動車税と自賠責保険料は基本的には認められません。
事故車両の未経過分の自動車税,自賠責保険料も還付があるため基本的には認められません。
 
一方で,自動車取得税は基本的には認められます。自動車重量税は,新車両分は基本的には認められませんが,事故車両の未経過分は基本的に認められます。リサイクル料も基本的に認められます。
検査登録手続費用,車庫証明費用などの「車両を取得する都度,出捐を余儀なくされる法定の費用(手数料)」は基本的に認められます。それらの代行費用や納車費用も通常依頼している実情から基本的に認められます。
 
法定整備点検費用は,新車購入時から12ヶ月後と,その後24ヶ月おきに法律上点検が義務付けられているために要する費用であり,買い替え時には発生する性質の費用ではないため基本的には認められません。
なお,対物超過特約を使ってもらえる場合は,買換諸費用は貰えません。


評価損

修理してもなお機能に欠陥が生じる場合(技術上の評価損),あるいは事故歴により商品価値の下落が見込まれる場合(取引上の評価損)に,損傷の内容・程度,修理の内容,修理の額,初年度登録からの経過期間,走行距離,車種(いわゆる高級車であるか)等を考慮して損害が認められる場合があります。

取引上の評価損とは,査定価格の下落という交換価値の減少の損害のことをいい,初年度登録から3年以内程度の人気車両が対象の目安で,認められても修理費の3割程度が上限であることが多いです。

事故による修理部分が躯体部分か,躯体に影響が出る可能性があるために中古車販売店が事故車扱いにしている実態がある部位の損傷(中古車販売業者から聞き取る)の場合で修理費の2割,それ以外は1割が目安です。

評価落ちの有無と程度の証拠が必要な場合においては,日本自動車査定協会による評価落ち査定(事故減価証明書)を取得する方法もあります。


その他請求可能性がある損害

休車損

運送者やタクシーなどの営業車で車両の修理又は買換えのために使用できなかった場合の得べかりし利益の損害をいいます。

具体的には,
一台あたりの1日の利益〔(直近3ヶ月又は1年の日給−変動経費としての燃料費,通行料,運転手の乗務手当等)÷保有台数〕
を計算し,相当な修理期間や買い替え期間の範囲で損害が認められます。

なお,予備車両(遊休車)がある場合は,現実に休車損は発生しないため認められません。

被害車両がタクシーの場合,タクシー会社のタクシーは空車が多い(実車率が低い)ことから,遊休車があると主張されることが多いですが,これについてはタクシーの空車が多いことから直ちに休車損を否定していない裁判例が多いです。

代車使用料

車両の修理又は買換えのために代車を使用する必要性があり,実際に代車を利用した場合,相当な修理期間(2週間が目安)又は買換期間(1か月が目安)につき代車使用料を損害と認められます。

なお,代車期間には保険会社との交渉に要する合理的な期間も含まれ,保険会社が協定を拒絶して修理費を負担しない態度を明確にする場合やそれ以前であっても合理的な検討期間が経過するまでは修理に着手しなくても無理からぬものといえるため,その期間を代車期間として主張することも認められます。

携行品等

事故と因果関係があれば,事故時までの経年劣化分を考慮して,事故時の時価額が損害として認められます。時価額は,定率法の減価償却率に基づき計算するか,オークションサイトなどで同じ商品の似た購入時期の価格を調べることが多いです。

弁護士費用

裁判になれば,過失相殺後の認定額の1割程度が損害として認められる可能性はあります。

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