解決事例300 男性(35歳)・事故から30年後に発覚した高次脳機能障害の後遺症の損害賠償を加害者の相続人及び保険会社に対して求めた事案

依頼者:男性(症状固定時 35歳)

等  級:5級相当
傷病名:高次脳機能障害


【事案の内容】
本件は、原告が
約30年前に発生した交通事故(以下「本件事故」という)の損害賠償請求を、加害者の相続人及び当時加害者が損害賠償保険契約を締結していた保険会社に対して、事故から30年後に発覚した高次脳機能障害の後遺症の損害賠償を求めた事案です。


【事故態様】 自転車VS自動車

被害者Xは、小学2年生の時に、自転車で道路に出たところ、速度超過した加害車両Yに衝突しました。

  当時(約30年前)は、「高次脳機能障害」という傷病名はなかったため、外傷として左足の複雑骨折だけが問題とされ、脳機能障害については不問のまま、小学校5年生時に症状固定となり、一定額の損害金にて示談されていました。

 Xの母X2は、Xが事故後明らかに人格が変わったことに気が付かれておりましたが、原因がわからないままでした。
具体的に挙げますと、
・それまで活発だったがおとなしくなったこと
・事故前は成績良かったのに、記憶力・集中力・同時遂行能力などが事故後明らかに能力減退していること
等です。
 原因が分からないため、何の手も打てぬまま、Xは中学を卒業し、就職しましたが、そばや、工場、飲食店等職を30近く転々とすることになりました。
 困り果てたX2が、Xの就労について職業訓練所に相談に行ったところ、Xを見た指導員が「高次脳機能障害かもしれない」という指摘をし、初めて高次脳機能障害という傷病名があることを知り、当事務所に相談に来られました。




【交渉過程】
1)当事務所ではまず、当時の医療記録の収集を試みました。

しかしながら、如何せん30年前の事故である故に病院では記録を破棄していました。

2)協力医師の助力を得て、Xの神経心理学検査等を再施行し、後遺障害等級認定の診断書を作成していただきました。
その後遺障害等級認定の診断書によると、後遺障害5級相当の症状であることがわかりました。


3)本件事故の加害者は死亡していたため、その相続人調査を行い、加害者の相続人と当時加害者が損害賠償保険契約を結んでいた保険会社を相手に、損害賠償請求訴訟を提起しました。

問題点
・除斥期間・・・不法行為に基づく損害賠償請求は不法行為の時から20年経過により除斥期間経過として権利行使できなくなる(民法724条後段)。

本件は、除斥期間を経過しているかどうかが問題でした。

もっとも、一部公害訴訟(じん肺訴訟)においては不法行為の損害の発生時点について潜伏期間をえて症状が発言したときが損害発生時として評価する最高裁判所の判例があります(最判平成16年4月27日)。

また、被害者が被害に遭った際に心神喪失状態にあるため自ら権利行使できない場合に、除斥期間経過後、後見人が就任してから損害賠償請求した事案において事項停止の法理を援用して除斥期間の効果を制限する最高裁判所の判例もあります(平成10年6月12日)。


本件においてもこれらの判例法理にを援用し除斥期間の効果を制限すべく主張を尽くしました。

援用できる法理は全て援用したものの上記最高裁判所判例は特殊事案に関する判例であり、そのまま本件に該当するものではないと裁判官の見解を示唆されました。

しかし、和解交渉にてYらから和解金100万円を引き出し和解にしました。

Xらも、もともと困難な主張であることは認識しており、後悔せぬように訴訟提起する意向であったため、望外の和解金を取得でき、喜んでいただけました。

■今回の解決事例のポイント■

●高次脳機能障害という病名が認識されていなかったため、苦労を重ねた被害者とその家族の訴えを遂げたこと。

本件の特殊性は何と言っても、事故から30年も経過している点です。
30年前には高次脳機能障害という傷病名もなかったので、当時交通事故により高次脳機能障害を煩った被害者は事故により自分がどのような障害を被ったかを認識しないまま示談している可能性があります。

本件についてもかかる不合理があり、社会正義を貫徹するために難事件に挑みました。

すなわち、不法行為に基づく損害賠償請求は不法行為の時から20年経過により除斥期間経過として権利行使できなくなる(民法724条後段)。本件でもどのようにとらえても除斥期間を形式的には経過している事案でした。

もっとも、一部公害訴訟(じん肺訴訟)においては不法行為の損害の発生時点について潜伏期間をえて症状が発言したときが損害発生時として評価する最高裁判所の判例があります(最判平成16年4月27日)し、 

また、被害者が被害に遭った際に心神喪失状態にあるため自ら権利行使できない場合に、除斥期間経過後、後見人が就任してから損害賠償請求した事案において事項停止の法理を援用して除斥期間の効果を制限する最高裁判所の判例もあります(平成10年6月12日)。

本件においてもこれらの判例法理にを援用し除斥期間の効果を制限すべく主張を尽くしました。

援用できる法理は全て援用したものの上記最高裁判所判例は特殊事案に関する判例であり、そのまま本件に該当するものではありませんでした。

しかし、和解交渉にてYらから和解金100万円を引き出し和解に成功しました。


依頼者XとX2は、原因がわからぬまま、30年余りも後遺障害を背負って生活されてきました。そのご苦労は想像に難くありません。本件では、そのお気持ちを社会に訴えるため、提訴に踏み切りました。そもそも請求の難しい事件である中で、和解できたことは依頼者にとって、とても意味のあることでした。

請求できるかどうかわからないけれど、納得できない思いを抱えて生活されている交通事故被害者の方はまだまだいらっしゃると思います。どうかご自分の気持ちを押し殺す前に、専門家にご相談ください。それも、なるべく早めにご相談いただきたいと思います。請求できるかどうか、あるいは、納得すべき状況なのかどうか、弁護士が親身にアドバイスさせていただきます。
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