④むち打ちについて

1 むち打ちは後遺障害に当たるか

(1) 交通事故では、どのような損害が発生するでしょうか。

 まず、むち打ちとは、「交通事故などにより頭部が鞭の動きのように前後に過度の屈伸をし、首の組織に損傷を生じたために起こる症状」をいいます。具体的には頭痛・肩凝り・手足のしびれ・めまい・耳鳴りなどの症状がみられます。

 後遺障害とは、交通事故による負傷が完治せず、治療を続けてもそれ以上状態の改善が見込まれない状態になってしまった症状のことをいいます。損害賠償において、各人の後遺障害について実際の損害を個別に認定するのは困難であるため、症状の程度ごとに等級を設けて、損害の算定基準としています。この後遺障害等級は,自動車損害賠償保障法施行令の別表(第一および第二)において定められており、重い方から1級~14級の等級を定めています。この別表に基づき,個別の事故について,どの等級に当てはまるのかを,「損害保険料率算出団体に関する法律」により設立された損害保険料率算出機構が認定することになります。

 むち打ちが後遺障害に当たるかどうかについては、次の3つの場合に分けられます。

12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当。

⇒この場合には、慰謝料290万円、労働能力喪失率14%で10年間というのが損害の基準となります。例えば、年収500万円なら1年で500÷100×14=70(万円)の労働能力喪失の損害が生じ、これが10年で700万円の逸失利益であると考えます。

14級9号「局部に神経症状を残すもの」に該当。

⇒慰謝料110万円、労働能力喪失率5%で5年間という基準になります。

非該当

⇒慰謝料・逸失利益なし、となります。

 

2 適切な等級を獲得するためには

(1)忙しいからといって痛みを我慢せず、まじめに通院すること

 被害者自身の判断で通院を中止しないこと。

⇒6か月未満で症状固定した場合には、後遺障害にはまず非該当とされます。

 自己判断による通院の中断は後遺障害認定にとって致命的となります。

(2)過ぎたるは及ばざるがごとし

 通院が長ければよいというわけでもなく、適切な時期に症状固定との判断がされる必要があります。医師とよく相談して、通院のしすぎに注意しましょう。

(3)通院する病院選びは慎重に

 医師の対応に納得できなければ、早期に転院を検討しましょう。

(4)神経学的症状であることが重要

⇒後遺傷害の認定は書面審査であるため、後遺障害診断書への記載が不十分ではよくありません。

(5)症状が残る被害者の場合には、治療を長期間続けるよりも、適切な時期に症状固定して、後遺障害の等級を得て、支払われた慰謝料などの保険金で治療を続ける方が得策!!

・参考資料

自動車損害賠償保障法施行令 別表


 別表第一 (第二条関係) 

等級

介護を要する後遺障害

保険金額

第1級

一 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

二 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

4000万円

第2級

一 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

二 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

3000万円


備考 各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であつて、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする。 

別表第二 (第二条関係) 

等級

後遺障害

保険金額

第1級

一 両眼が失明したもの

二 咀嚼及び言語の機能を廃したもの

三 両上肢をひじ関節以上で失つたもの

四 両上肢の用を全廃したもの

五 両下肢をひざ関節以上で失つたもの

六 両下肢の用を全廃したもの

3000万円

第2級

一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの

二 両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの

三 両上肢を手関節以上で失つたもの

四 両下肢を足関節以上で失つたもの

2590万円

第3級

一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの

二 咀嚼又は言語の機能を廃したもの

三 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

五 両手の手指の全部を失つたもの

2219万円

第4級

一 両眼の視力が〇・〇六以下になつたもの

二 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの

三 両耳の聴力を全く失つたもの

四 一上肢をひじ関節以上で失つたもの

五 一下肢をひざ関節以上で失つたもの

六 両手の手指の全部の用を廃したもの

七 両足をリスフラン関節以上で失つたもの

1889万円

第5級

一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になつたもの

二 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

三 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

四 一上肢を手関節以上で失つたもの

五 一下肢を足関節以上で失つたもの

六 一上肢の用を全廃したもの

七 一下肢の用を全廃したもの

八 両足の足指の全部を失つたもの

1574万円

第6級

一 両眼の視力が〇・一以下になつたもの

二 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの

三 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの

四 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの

五 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの

六 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの

七 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの

八 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの

1296万円

第7級

一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になつたもの

二 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの

三 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの

四 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

五 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

六 一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失つたもの

七 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの

八 一足をリスフラン関節以上で失つたもの

九 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

十 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

十一 両足の足指の全部の用を廃したもの

十二 外貌に著しい醜状を残すもの

十三 両側の睾丸を失つたもの

1051万円

第8級

一 一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの

二 脊柱に運動障害を残すもの

三 一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの

四 一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの

五 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの

六 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの

七 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの

八 一上肢に偽関節を残すもの

九 一下肢に偽関節を残すもの

十 一足の足指の全部を失つたもの

819万円

第9級

一 両眼の視力が〇・六以下になつたもの

二 一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの

三 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの

四 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

五 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの

六 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの

七 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの

八 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの

九 一耳の聴力を全く失つたもの

十 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

十一 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

十二 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの

十三 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの

十四 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの

十五 一足の足指の全部の用を廃したもの

十六 外貌に相当程度の醜状を残すもの

十七 生殖器に著しい障害を残すもの

616万円

第10級

一 一眼の視力が〇・一以下になつたもの

二 正面を見た場合に複視の症状を残すもの

三 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの

四 十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

五 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの

六 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの

七 一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの

八 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの

九 一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの

十 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの

十一 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの

461万円

第11級

一 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの

二 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

三 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

四 十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

五 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの

六 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの

七 脊柱に変形を残すもの

八 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの

九 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの

十 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

331万円

第12級

一 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの

二 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

三 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

四 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの

五 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

六 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの

七 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの

八 長管骨に変形を残すもの

九 一手のこ指を失つたもの

十 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの

十一 一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの

十二 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの

十三 局部に頑固な神経症状を残すもの

十四 外貌に醜状を残すもの

224万円

第13級

一 一眼の視力が〇・六以下になつたもの

二 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの

三 一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの

四 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの

五 五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

六 一手のこ指の用を廃したもの

七 一手のおや指の指骨の一部を失つたもの

八 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの

九 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの

十 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの

十一 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの

139万円

第14級

一 一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの

二 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

三 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの

四 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの

五 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの

六 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの

七 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの

八 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの

九 局部に神経症状を残すもの

75万円

備考

一 視力の測定は、万国式試視力表による。屈折異状のあるものについては、矯正視力について測定する。

二 手指を失つたものとは、おや指は指節間関節、その他の手指は近位指節間関節以上を失つたものをいう。

三 手指の用を廃したものとは、手指の末節骨の半分以上を失い、又は中手指節関節若しくは近位指節間関節(おや指にあつては、指節間関節)に著しい運動障害を残すものをいう。

四 足指を失つたものとは、その全部を失つたものをいう。

五 足指の用を廃したものとは、第一の足指は末節骨の半分以上、その他の足指は遠位指節間関節以上を失つたもの又は中足指節関節若しくは近位指節間関節(第一の足指にあつては、指節間関節)に著しい運動障害を残すものをいう。

六 各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であつて、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする。

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